私が納品した英文に対してお客様から質問が来たので回答してほしいと翻訳会社からメールがあったことはFacebookにも書きましたが、これには続きがありました。
翻訳会社の担当者が勝手に変更してお客様に納品し、お客様から質問が来て私に回されたのですが、翻訳会社の話だとお客様からその単語で統一するようにとの指示があったためだとのことでした。
自分で変更を指示しておいてそれに対して質問をするお客様なんているのだろうかと思ったのですが、いるんです。
ナント、お客様の方でも複数名が翻訳をチェックしているのだそう。また、チェックする人も異動で変わることがあり、指示や質問が人により時により変わるのだそうです。
お客様の社内でも混乱し、指示がブレるため、この案件が始まって半年経った今でも用語集すら作れない状況だとか。
これで思い出したのですが、以前、ある翻訳会社を通じて大手会社の財務諸表の翻訳をした時に、納品した文章をお客様側でも5人ぐらいがチェックし、その都度また修正しろと指示されたことがありました。
私は英文なので校正者にそのまま回したところ、「丁寧に校正したものをめちゃくちゃにされ、それをさらに修正しろというのは納得が行かない」と言われてから英文を見たのですが呆れました。
財務諸表でしたので最終校正はプリントアウトしたものを公認会計士である夫がしたのですが、それを翻訳校正などおそらくしたことがないだろうと思われるアメリカ人会計士もチェックして主語を単数から複数にしたものの動詞はそのままだったり、日本人校正者(おそらく全員「帰国子女」)もめちゃくちゃな修正を提案するし。
修正するのであれば完全に修正すべきです。
私のほうでは、普通、私が翻訳したものを一人のアメリカ人校正者に渡し、何度かやり取りをして完成したものをプリントアウトして夫に読んでもらいます。
つまり、納品前に最低二人の手が加わります。(納得できない場合にはもう一人のアメリカ人校正者の意見を聞くこともあります。)
それを納品後に翻訳会社の担当者がチェックし、最低限のチェック(訳抜けがほとんど)をし、お客様に納品するのです。
それをまたお客様側で複数名がチェックしたらどうなりますか?
私のほうではアメリカ人の友人と夫の二人にしかチェックをしてもらいませんが、それでも夫の修正が間違っていることもあるのです。
時間があれば夫が修正したものをアメリカ人の友人に戻してダブルチェックをしてもらうと、その修正は米語ではNoの場合も少なくありません。
なので、アメリカ人の友人のチェックのみで納品したほうがいいのかなと思うこともあります。
答えが一つしかない数学と違い、文章は変えようと思えばいくらでも変えることができますのでどこかで終わりにしなければなりません。
修正して文章がよくなるのならいいのですが、逆のこともよくあります。
また、「帰国子女」というのもネックです。
帰国子女だから英語ができると思って会社は採用するのでしょうけど、帰国子女は海外で学校教育を受けただけ。例えば、自分でスーパーで買い物をして料理したり、高級レストランで食事をしたりという経験はありません。
自分で牛を飼って肉にしてもらったことなどないでしょうし、鶏に足が4本あると思っていたりします。
なのでメニューの翻訳となるとあまり役に立たないのですが、訳文の修正をするために雇われているのでどこか修正しなければならないと思うようです。
プライドもあるので勘違いな修正をしてくることもあります。
(以前、別の会社の財務諸表を翻訳した時も、アメリカの大手会計会社で7年仕事をしていたという元海外駐在員が自分の訳語が正しいと主張して困ったことがあります。最終的に社長が判断し、私たちの訳語が採用されましたが、エラい手間がかかりました。)
日本では完璧さを求めるあまり、やりすぎになっているのではないかと思います。
特に英文に関しては異様なほどです。
翻訳者や翻訳会社がせっかくいい文章を納品しても最終的にウェブサイトに掲載された英文が残念な結果になっているものがあるのはこういう理由からなのかも知れませんね。