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翻訳の原稿

私たち翻訳者は、原稿がどのようなものであれ、最終的に翻訳した言語で読んで違和感のないものに仕上げなければなりません。翻訳をした後も、スペルチェックを通してから校正に回します。それでもミスがあることがありますので、校正が終わったものもそのまま納品せず、自分で目を通して直された箇所に納得が行かなかったら校正者と何度かやり取りを繰り返し、最終的に納品するという形です。

翻訳者がここまでするのですから、そのもととなる原稿はきちんとしているのだろうと思うワケです。ところが、先々週から続けて、信じられないレベルの原稿が入り、まともに眠らずに朝から晩まで仕事をする結果になってしまいました。

翻訳会社からの依頼を受けたらまず原稿の量や内容をチェックしますが、ほとんどの場合、簡単でだれにでもできるような仕事は来ませんから、見ただけでウッとなるようなものがほとんどです。で、とりあえずスキムしてOKの返事をしますが、実際はそんなに細かく見るわけではなく、自分にできそうな分野であれば、というか、ほとんどの仕事はお請けするわけです。

先々週のは会計関連の論文の日英翻訳でした。私自身、4年間経理の仕事をし、日々の会計処理やGST(日本の消費税のようなもの)申告をしていましたので、実務的な面での経験はあります。夫はプロの会計士ですので、校正者としてはこれ以上望めないだろうというレベルです。

ところが、原稿には誤字脱字がいっぱい。。。

その分野のプロが翻訳をするのが理想的ですけど、普通はそういう人たちは、今回の私の夫のようにフルタイムでその仕事をしています。まぁ、その代わりに毎日翻訳などしていたら会計士としてはプロでなくなってしまいますが。まぁ、その分野の一番の専門家は原稿を書いた先生なワケで、他人がそれを全く別の言語に訳すというところに無理があるというのは分かっています。

それでもできるだけ調べてそれらしい文章にするのが私の仕事。でも、そこまで専門ではないので、誤字脱字はそのまま検索するワケです。はっきりとその段階で誤字だと分かれば問題はないのですが、そう見えないものもあるんですね。また、参考文献として使用されている本も、原稿の執筆者は英語から日本語に訳されたものを見て書いているので、逆に英語版を探して、それに相当する箇所を読んでからでないと使用できませんから、手間がかかるのです。本文の中で引用されているので探さないわけにも行かず、検索をしたら、あまりにも古い文書で現在はその部分が削除されてしまっていて、延々と時間をかけてある大学の図書館にあるのを見つけて読んでみたものの、引用されたと思われる箇所が見つからない。。。半日かけて何度も読み返し、小遣いでネイティブの娘を釣って読んでもらっても引用箇所が見つからず、泣きたくなりました。

その後、久しぶりに入った英日のお仕事。車の部品の整備レベルでの説明書で、40ページちょっとあるものの、1つの部品についてのものなのでそう難しくないだろうと思ったのですが、まず著者の名前から詰まってしまいました。名前もメールアドレスも電話番号も英語圏ではないんです。でも、その段階でもう断ることはできませんから前進あるのみ。

誤字脱字ばかりか、「今まで他で見たことのない単語(スペル間違いか筆者の覚え間違いだと思う)」が至る所に出てくるし、述語のない文章で文法的なミスだらけ。夫に読んでもらっても分からない部分も多く、想像に頼る部分ばかりで気分的にスッキリしないんですね。「略語」として単語をリストアップするのなら、その文書の中で使われているものをリストアップするのが普通ですけどね、何か違う。とりあえず、「英文原稿を英語のネイティブに校正してもらうことを強くお勧め」ということで納品しましたが、依頼人は第三言語を使用される方なので通じたかどうか不安です。

で、夕べ、会計論文の先生から「脚注部分と参考文献部分の翻訳がされていない」とフィードバックをいただきました。でも、日本語版とは引用した文書も違うので、当然脚注も変更しなければならず、全く脚注がなかったわけではないんです。でも、「日本語の原稿に忠実に脚注を」と言われ、困ってしまいました。一番悩んだのは、2語の単語でした。日本語ではカタカナ用語なので意味が分からない人もいるだろうからと脚注をつけるのは分かるのですが、その英単語が理解できない人はいないだろうと思われるほど簡単な単語で、脚注をつける必要もないし、夫もそれ以上言い換える意味はないだろうと言うのですが、依頼されてからは何とかするしかないでしょう。

また延々と悩み、いろいろな辞書を調べた結果、原稿の脚注の単語が誤字であることに気がつくまで1時間もかかってしまいました。参考文献も全て日本語の文献でしたので、日本語で論文を書く先生方がよく英語の文献も日本語に訳さずにそのまま掲載していますので、英語の論文でも日本語の文献は日本語で紹介すればいいのではないかと思ったのですが、仕方がないので英語のタイトルが見つかったものは英語で、それ以外はローマ字で表記しました。

あー、でも、何とか、夕べも納期にギリギリで間に合いました。今日は、直接ご依頼いただいた単発のものが1つありますが、他に仕事を入れずに洗濯掃除したり、夕べ娘たちに約束していながら作れなかったラザニアを作ったりしようと思います。娘の友達が泊まっているので何かしてあげようかなとは思うものの、どうなるか。

先週から飲んでいるステロイドのせいか、不眠が続いています。夜、ベッドに横になると気分が悪くなります。左目は相変わらず見にくいです。目も休めなければと痛感。おばさんですし、週に1日は休みが取れるように努力しなければと思います。